前回の記事で公認会計士によるサステナビリティ情報の保証について触れましたが、実は非財務情報に対する保証業務は昔から実施されており、国際的な保証基準も存在しています。
国内の現行制度上、保証がマストとはなっていないのですが、サステナビリティに関心が高い企業等は任意で保証を受けている状況なのです。
なお、サステナビリティに関する情報は日々刻々と変化しており、あくまで投稿時点の情報を参照していることにご留意ください。
国際保証業務基準 ISAE3000
日本公認会計士協会のホームページでも紹介されていますが、国際監査・保証基準審議会(IAASB)が開発したISAE3000を基本として、主題ごとに個別の基準が策定されている構成です。
この中でも温室効果ガス報告に対する保証業務(ISAE3410)は、サステナビリティ情報の1つとして特に注目を浴びているGHG(CO2等)排出量が対象となっており、原文が公表されたのは2012年6月とかなり歴史もあります。
日本公認会計士協会から翻訳版も公表されており、ISAE3410は合理的保証業務と限定的保証業務の両方を対象としていますが、現行実務では限定的保証業務が主流となっているように思われます。
ちなみに、それぞれの保証業務の違いは、非常にざっくり言うと以下のイメージです。
- 限定的保証業務:趨勢分析や関連数値・情報との整合性を確かめることで保証対象の数値が合っているかチェックする(イメージ:四半期レビュー)
- 合理的保証業務:上記分析に留まらず、根拠となるエビデンス(請求書など)も確かめることで保証対象の数値が合っているかチェックする(イメージ:監査)
合理的保証業務となると、財務数値がCO2排出量に置き換わった監査を実施するイメージですね。
公認会計士の方からは「何を軽々しくとんでもないことを言っているんだ」と突っ込まれそうですが、私もそう思いますので安心してください。
保証業務の担い手は誰になるのか?
保証業務の担い手については、金融庁のディスクロージャーワーキング・グループ(DWG)でも議論が行われており、2022年12月15日の資料を見ると四半期開示についても議論されているので、公認会計士にとっても注目度の高い回だったと言えます。
サステナビリティ情報に対する保証のあり方として、私が気になったのは主に以下の点です。
- 欧州や米国では限定的保証から導入し、合理的保証に移行するアプローチが提案
- IAASBにおいて基準開発に向けた審議が開始されており、2023年9月までに基準の公開草案を承認し、2024年12月から2025年3月の間に最終化する予定
- ISSBが開発しているサステナビリティ開示基準において、サステナビリティ情報の開示に当たり財務情報との結合性(コネクティビティ)を前提としていることを踏まえると、財務諸表の監査業務を行っている公認会計士・監査法人によって担われることが考えられる
- サステナビリティというテーマが広範であり、多様な専門性を必要とする領域であることを踏まえると、保証の担い手を広く確保することも重要(欧州と米国では、法定監査の監査人には限定しないことを検討)
国際基準が開発され、それが日本に輸入されてくる流れは恐らく既定路線(監査もそうですし)なので、まだ確定したわけではありませんが、公認会計士に対しても強い期待が寄せられていることは分かりますね。
財務情報との結合性(コネクティビティ)については公認会計士が強みを発揮できるポイントだと想像できますが、具体的にどのような価値を提供できるのかは未知数なので、より理解を深めていく必要があると改めて思う次第でした。
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